経営コラム第93回「賢い社長の経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」配信!
第93回 手形サイト60日に短縮、中小企業の資金繰り改善に期待
公正取引委員会は下請法の運用を変更し、2024(令和6)年11月以降、約束手形の決済期限を120日(繊維業90日)から60日に短縮することを公表しました。
手形取引は業界の商慣習により古くから継続しており、元請企業と下請企業との力関係もあり、中小企業の資金繰りの課題となっていました。
今後、手形サイトが短縮されることにより、中小企業の資金繰りの改善が期待されています。
そこで今回は、手形サイトの短縮による中小企業の資金繰りへの影響について、説明します。
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■入金サイトの短縮で資金繰りが改善
大口な取引ほど支払いが手形になることが多く、多額の売上債権をかかえて資金繰りが苦しい中小企業が多かった
今後、手形サイトが120日から60日に短縮されることにより、中小企業の経営にとって良い影響が期待される
資金回収が早まれば、回収不能や資金不足のリスクが減るだけでなく、仕入先への支払い条件も改善する
■支払サイトの短縮で追加の資金調達が必要
約束手形の決済期日が早くなれば、仕入や外注費を手形で支払っている会社にとっては支払いサイトが短くなる
製造業や建設業では製品や工事の完成までに時間がかかるため、その間の仕入れや外注費を手形払いにし資金繰りしている
支払サイトが短くなるので、売上代金を分割して前倒しで受領できるように得意先に対して交渉しておく
■手形サイトの短縮による金融コストの増減
売上債権の回収までに必要となる運転資金の銀行借り入れが減り、それにともない支払利息も減少する
支払手形を振り出している会社は、運転資金の不足額を銀行融資等で調達しなければならず、支払利息が増加する
損益計算書の営業外費用を確認し、手形サイトの短縮で金融コストがどの程度変動するのかを見積もっておく
中小企業の資金繰り改善を目的に、2024年11月から手形サイトが短縮される
手形取引は年々減少傾向にあり、2026年度末までに紙の手形は廃止される予定