経営コラム第120回「賢い社長の経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」配信!

第120回 社長は貸借対照表を流動比率から読み解く

財務の健全性を流動比率で点検
中小企業の経営会議の場では、会計資料の中で損益計算書しか見ていないというケースが少なくありません。
業績を確認する上で、売上と利益に関心が集中するからです。
一方で、貸借対照表は大きな変動があまりないので、軽視されがちです。
しかし、貸借対照表は会社の財務状態を確認するうえで欠かせませんので、忙しい社長としては、ポイントを絞って短時間で点検するようにしてください。
貸借対照表を検証するときに、よく使われるのが「流動比率」です。
流動比率は、短期的な資金繰りや財務の安全性を判断するうえで特に重要な指標になります。
そこで今回は、流動比率による財務状態の点検の仕方について、説明します。

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■流動比率の標準的な分析評価基準

流動比率とは、「流動資産 ÷ 流動負債 × 100」で求められる指標
短期に支払わなければならない債務を、すぐに資金化できる資産で準備できているかどうかを示す
通常120%以上が望ましいとされていて、100%未満だと短期の支払いに必要な資産が不足している状態

■月次決算で流動比率の変動をチェック

流動比率が変動している場合は、流動資産の具体的な内訳、特に売掛金と棚卸資産を確認
売上債権回転期間(売掛金÷月商)を使って、平均的な回収期間を把握しておく
流動比率が悪化傾向を示したら、資金繰りが苦しくなると考えて、早めに手を打つ

■他社の流動比率を見るときの注意点

M&Aや業務提携などの際に、対象企業の貸借対照表を見て流動比率を検証するときには注意が必要
M&A対象企業の場合、売上を前倒しで計上した結果、売掛金が膨らんでいることがないか注意
業務提携先の場合、利益率をよく見せるために在庫を過大計上していないか、在庫の変動状況を確認

流動比率の推移とその構成要素の変動を常にチェックし、早期に資金繰りの問題点を特定する

流動比率の変化に気づき、数字の裏にある実態を読み解くことで、健全な経営と持続的な成長を実現できる